企業が働く障害者の負担を取り除く「合理的配慮」は、働く機会の平等を与える一方で、必ずしも「結果の平等」まで保証するものではありません。配慮を受けることにはメリットがある反面、相応のトレードオフが存在します。
特に、知的障害を伴わない「高機能発達障害」の社員や、幹部候補として採用された総合職の場合、十分な検討のないまま合理的配慮を適用することが、結果として本人の長期的なキャリア上の大きなリスクになり得ると産業医の視点から指摘されています。
「両立支援」の必要性と安易な配慮のリスク
高機能発達障害者は知能が高くても、対人交渉やマルチタスクなどの複数課題の同時処理に困難を抱えることがあります。適切な配慮がなければ無用の休職や不本意な早期退職につながるため、厚生労働省も「治療と仕事の両立支援」として、企業と主治医の情報交換や環境調整などのサポートを推進しています。
しかし、ここで注意が必要なのは、将来のキャリアへの影響を考慮せずに配慮を適用することのリスクです。
主治医の配慮意見と人事評価のギャップ
職場で業務上の注意を受けた社員がメンタルクリニックを再受診し、大学時代と同様の手厚いサポートを求めて、主治医に以下のような診断書を書かせて会社へ提出するケースが見られます。
- 対人交渉の免除
- 定型業務への限定
- 環境変化のない部署への配置
しかし、主治医は企業の人事制度や処遇の仕組みを熟知しているわけではありません。
このような配慮をそのまま適用すると、総合職としての職責を果たせなくなり、結果として昇給や昇格などの人事評価で不利益を被るリスクが生じます。業務内容や要求される責任の差によって生じる処遇の違いは「障害差別」ではなく、合理的な「区別」だからです。
産業医が果たす「翻訳」の役割
高機能発達障害の場合、コミュニケーションや業務上の課題は永久的に克服不可能なものではありません。ビジネススキルのパターン学習によって克服・成長が可能です。診断名からただちに「永久免除」を導き出すことは、結果として本人の成長機会を奪ってしまうことになります。
職場の現実や人事制度を知らない主治医の意見に対し、適切に「待った」をかけられるのは、同じく医師である「産業医」です。
大切なのは、主治医の診断を鵜呑みにせず、人事制度や職場の実態に照らし合わせて、実現可能な配慮へと翻訳することです。企業と社員の双方がキャリア上のトレードオフを正しく理解し、単なる免除ではなく長期的な成長に向けたサポートを行っていく視点が求められています。
引用したサイト: https://news.yahoo.co.jp/articles/2f67703a9e31321020eeafb67662d00ccf22c6c1?page=1
