近年、病気や怪我で働けなくなった際に支給される「傷病手当金」の支給額が急増しています。2023年度には総額が約6,000億円に達し、10年前と比べ倍増。そのうち約4割が「精神及び行動の障害」によるもので、メンタルヘルス対策は今や企業にとって最大の課題の一つとなっています。
しかし、この背景には労働環境の悪化だけでなく、主観に頼らざるを得ない診断書発行の実態や、不正受給の懸念が浮上しています。
診断書の絶大なる効力と企業の苦悩
企業経営者からは、「昨日まで元気に働いていた社員が、突然『3ヶ月前からうつ病だった』という診断書を持ってきた」という困惑の声が聞かれます。
精神疾患は血液検査のような客観的な指標がなく、医師は患者の主観的な訴えをもとに診断を下します。さらに、診断書には詳細な根拠を記す義務がありません。医師の診断書は法的・社会的に極めて強い効力を持つため、企業側が不自然だと感じても、それを覆すには「診断が誤りである」という非常に高いハードルの証明を強いられるのが実情です。
加速する診断書発行ビジネスの影
この歪みを加速させているのが、一部のオンライン診療の実態です。本来、精神科の診断には慎重な鑑別が必要ですが、一部の悪徳クリニックでは、短時間の診察で即日診断書のPDFを発行することを売りにしています。
数千円の手数料で、患者(利用者)が望む通りの診断書を発行する。こうした「診断書発行ビジネス」の存在は、厚生労働省の審議会でも問題視されています。また、「こう説明すればうつ病の診断が出やすい」といった受給マニュアルを渡し、失業手当を不正受給するようサポートする事業者も出てきています。
制度の信頼性を守るために
もちろん、過重労働やハラスメントに苦しみ、正当に支援を必要としている労働者が大半です。しかし、一部の不正や不適切な診断が放置されれば、制度の持続可能性が損なわれるだけでなく、「本当に苦しんでいる人」に対しても疑いの目が向けられるという最悪の結果を招きます。
傷病手当金は、働く人々のための大切なセーフティネットです。医療側にはより厳格で誠実な診断が、そして制度運用側には実態に即した見直しが求められています。
引用したサイト:https://gendai.media/articles/-/165944?imp=0
